沖縄の信仰と精神文化
沖縄には教典の宗教がない。像のない森、神職ではなく神女、共に食事をする祖先、落ちて拾い直せる魂がある。日本列島で最も古く、今も生きている信仰の体系である。
女性が担う信仰
をなり神(おなり神)
姉妹は兄弟を霊的に守る力を持つという信仰。ゆえに沖縄では家の祭祀を担うのは女性である。
祝女(ノロ)
王府が任命した世襲の公的神女。村の祭祀を司り、特定の御嶽に入れるのは祝女のみ。
聞得大君(きこえおおぎみ)
琉球王国最高神女。多くは国王の姉妹や叔母で、王と並ぶ地位。尚真王が信仰を統一するため制度化。1879年の王国消滅で廃絶。
ユタ
民間の霊媒。任命されるのではなく、カミダーリィによって「なる」。今も婚礼の日取り、病、墓のことで相談される。「医者半分ユタ半分」と言われる。
三世相(サンジンソー)
暦と風水の専門家。ユタと異なり、憑依ではなく計算による。引越しの日、家の向き、葬の日取りを見る。
聖なる場所
御嶽(うたき)
神が宿る聖域の森。像も祭壇も社殿もない。場所そのものが神である。多くは岩、古木、洞穴と、切ってはならない森。
- 斎場御嶽(南城市)— 最高の御嶽、世界遺産
- 園比屋武御嶽(首里城の入口)
- 参拝の作法:注連や結界の内には入らない、触れない、祭祀の撮影はしない
ニライカナイ
東の海の彼方にある神々の理想郷。神・穀物・生命が来る場所であり、魂が帰る場所。ゆえに御願は海に向かってなされる。
カー(井泉)
村ごとの聖なる井泉。新生児はここで産水を頂き、正月には若水を汲んで命を新たにした。
亀甲墓・破風墓
門中全体が入る家形・亀甲の大きな墓。清明祭には墓前に重箱を広げ、祖先と共に食事をする。悲しみではなく祝いの場である。
魂・身体・護り
マブイ(魂)
驚きや転倒でマブイは身体から落ちる。気力も食欲も失う。落ちた場所でマブイグミを行い、魂を体に戻す。祖母やユタが行う。
ヒヌカン(火の神)
台所に鎮まる火の神。三つの石、または塩・水・供物と共に香炉に祀る。家と神を繋ぐ「電話」であり、御願はここから始まる。姑から嫁へ受け継がれる。
平御香(ヒラウコー)
沖縄独自の黒く平たい線香。一枚が六本分。焚く本数によって願いの意味が変わる(三本・六本・十二本・十五本・十八本)。
魔除け
- シーサー:屋根や門に一対、家を守る
- 石敢當:T字路の角に据え、マジムンを退ける
- サン:ススキを結んで食べ物に載せ、魔が入るのを防ぐ
- ヒンプン:門と母屋の間の塀。魔と視線を遮る
